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インドネシア人看護師候補と国家試験の学習対策

『日本人ですら難しいのに、ましてやインドネシア人看護師が国家試験を合格するなんて』という悲観論が主流だそうです。しかし、本当に、インドネシア人の看護師が国家試験を合格出来ないのか という議論をする者は少ない。確かに、合格するのは今の制度では難しいかもしれないが、不可能ではないと考えている。

私の個人調査では、インドネシア人看護師が勤務している病院は、インドネシア人看護師候補に自習時間を与えるが、どのように教えるか どのように学習するか は、各病院の方針に委ねられる。場合によって、予算を設けて、国家試験の予備校や日本語学校にインドネシア人の看護師候補を通わせる病院もある。

病院が取った『学習対策』は、以下のようにまとめることが出来る。
1.日本語の基礎知識の向上が重要であると考える病院
2.国家試験の知識を早い段階から身につけることが重要であると考える病院
3.院内コミュニケーション能力を身につけることが重要であると考える病院

1.の病院は、『日本語学校に通わせる』や『日本語自習』の時間を設ける。
2.の病院は、『国家試験問題集を教える』や『国家試験の予備校に通わせる』
3.の病院は、とにかく『実習時間』を増やして、病院の様々な部を経験させる。

EPAの受け入れ制度の良し悪しとは別に、病院はインドネシア人看護師に対する教育目標を明確に定める必要がある。聞き取りの調査では、優先順位が異なったにしても『国家試験』と『日本の医療現場に早く馴染むこと』を目指していることが明らかであるが『国家試験の勉強』と『実習』と『日本語の勉強』とは関係が薄いと考えている傾向が強い。しかし、看護実習を通して、Japanese For Special Purpose(医療分野の日本語)『特別の目的のための日本語』を学ぶことも出来るし、やがて、その経験と知識の蓄積は、国家試験に役に立っていることも考えられる。

インドネシア人看護師に対して行われる教育は『Japanese for Medical Purpose(医療分野のための日本語』だと考えれば、第二言語習得理論を看護現場に応用することが出来る。しかし、インドネシア人看護師に対して行われるJMPの教授法は留学生に対して行われたJapanese for Special Purposeとは異なって、全く新しい分野あると言っても過言ではないと私は考えている。留学生は、『a)外国人向けの入学試験』を通り、『b)指導教授などとのコミュニケーションを図り』、最終的に、大学を卒業するために、日本人と同様に『c)論文を書いたり』、『d)学会での発表をしたり』出来ないといけない。そこで、留学生に対して行われるJSP教育の目標は、a)とb)とc)とd)の能力を身につけさせることである。

インドネシア人看護師に対して行うJSPは、
A.所定期間において、看護師国家試験を合格できるような知識を身につけてもらうこと。
B.主に(医療分野従事者と患者)コミュニケーション能力を身につけてもらう。
C.日本語の基礎能力を身につけてもらう。
ことでなければならない。
上記の目標を達成するために、無論様々な方法が有効であると考えられる。その中に、Krashenのインプット理論と認知的アプローチをモデルに教授法や教授の制度を各病院の現状(予算・時間・特徴)に合わせて構築することである。

Krashenは、以下の仮説を提唱した。
1)学習と習得が異なる。
  ここで言う学習(learning)とは、文法形式や語彙を暗記したり、それを使って問題を解いたりするような練習を通して、言語の知識を知ることである。
 一方、習得(acquisition)とは、その言語を身に付けることである。(話す・聞く)(書く・読む)のいずれか両方の能力を持つことである。
2)学習知識は、モニターの役割をする。
 learning(学習)で得た情報を元にして、言える文章の中で、どの文が適切なのか どの文がそうではないのか を仕分ける作業は、モニター(monitor)の役割と言う。
3)理解可能なインプットは、習得に繋がる。
 そして、学習者にとって丁度良いインプット(習った文法範囲内が多く出ている文章)(知っている単語が60%以上あり、そして、その語を用いて、全体の内容が大体掴める)こそ、言語習得につながる。無闇に、インプットを付けると、逆に、『見逃す』『聞き逃す』の癖がついてしまい、医療事故につながる可能性もある。

認知アプローチからは、『自動化処理(automatization)』という考え方を採用出来る。つまり、深く考えないで、記憶の引き出しから情報を直ぐに出せる記憶処理のことを言う。

国家試験の問題を解くのは、大学入試の受験問題を解くのとは同じである。100%内容を理解出来なくても、
a.過去問題の類似性などで、出題の問題を予測したりすることで、試験準備範囲を狭めることで、記憶の負担軽減につながる。
b.看護師国家試験の出題形式は、選択肢型出題形式であり、変な話、運がよければ、実力が伴わなくても、合格出来ることで、『正解に導く』『最低読まなければならない(情報)』を読み取る能力を育てる。


国家試験とJMP(Japanese for Medical Purpose)の共通点は、国家試験の問題も院内コミュニケーションも全て『文(sentence)』で行わなければならないという点である。従って、学習者であるインドネシア人看護師候補の日本語レベルに合わせて、国家試験の問題やその解説を導入しながら、日本語学習をしたほうが直感的に理論的に有効であると考えられる

ただし、次の考えなければならないのは、『病院のresource(資源)』である。インドネシア人看護師を受け入れる理由の一つは、『人材不足』を補うためであるという経済的な理由であるが、これだけの理由であれば、途中で辞めてしまう看護師の再雇用の政策をすれば良い。しかし、態々、インドネシアから看護師を招くということは、『人材不足』だけでは、済まされない。外国人看護師が日本の病院にいる意義を『経済的な理由』から解放しなければならない

どんな形態にしても、法人は自然のヒトの集団と関わっている。『ヒトの集団』と関わっていれば、ヒトとヒトとのヤリトリである『コミュニケーション』を疎かに出来ない。そして、病院も法人の一種であるので、『コミュニケーション』を重視しなければならない。コミュニケーション能力はCanale and Swain(1980)によると、
a)文法的能力
語と語の組み合わせを知っている。文と文との組み合わせを知っている。
b)社会言語学的能力
自分が所属している集団の決まりを知って、文法的に可能な文の中から、適切な文を言う知識を知っている。
上司に対して『you』に相当する『君』を使わないことは、考えようによっては、b)である
c)ストラテジー(方略的能力)
a)とb)の能力で、コミュニケーションが上手に対応できない場合に、用いる戦略。単語を知らない場合、造語を行ったり、既知の文法形式を用いたりする。

日本人だけの集団を考えれば、『文法的な能力』が既にあるが、問題は、b)とc)である。しかし、外国人が、その集団に入ると、a)もb)もc)も問題になる。このように、外国人を受け入れることによって、病院は自明であるa)とb)のコミュニケーション能力を問い直す(反省)機会を得ると考えても過言ではない。

そして、インドネシア人看護師を受け入れることによって、コミュニケーション反省が行われて、病院のコミュニケーションのあり方も根本的に問い直すことも出来る。

従って、JMP(Japanese for Medical Purpose)の最低限の資源(minimum resource)を定めて、病院は、それに伴う費用を出しても、無駄な費用ではないことと 私が言いたい。

以下は、最低限必要であると考えられるJMPの資源:
1. e-learningやwikipediaなどにアクセスするためのインターネットの接続およびそれを実現するためのパソコン。
2. 一般的な電子辞書(医学用語が入らなくても良い)
3. 日本語の教育係(社員か派遣社員か契約社員)
出来れば、正社員のほうが良い。正社員が、一定の期間においてインドネシア人と交流することによって、コミュニケーションにおいて反省が出来、その反省に踏まえて、病院のコミュニケーション向上に反映させる。
4.国家試験準備のための教育係(正看護師であれば、派遣でも正社員でも良い)
これも出来れば、正社員が良い。自己の知識を 文法的能力が発展途上のインドネシア人看護師候補にいかに伝えるか を工夫して、その反省点に、若い世代の日本人の看護師の育成に応用する。
5.外国人向けの日本語の文法書や、教科書や文法辞典。そして、国家試験対策本をそろえることである。

上記のminimum resourceは、出来るだけ、インドネシア人看護師の自己負担ではなく、病院の体質の向上の一環として、経費を出すべきであるが、実際に計算してみれば、それほどの金額ではないことが分かるであろう。『現場改善』の精神は、あるものを使え必要なものだけ必要な分だけ必要な時に、だす ことである。

是非、実践してもらいたい。

(上記の内容に関心や興味があれば是非アルビーまで連絡下さい。)

アルビー
Albertus Prasetyo Heru Nugroho
(通訳・翻訳・語学講師・言語コミュニケーションコンサルタント)
lakilaki_indonesia@yahoo.co.jp
090-9342-2726


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